札掛の森、堂平     
2000年10月21日(土)〜22日(日)
20日:自宅最寄駅菜の花台展望台札掛森の家林道終点→堂平→林道終点札掛森の家泊
21日:札掛森の家→布川→札掛森の家 
参考地図 : 地球の風「丹沢山塊」日地出版
参考図書 : 『丹沢自然ハンドブック』 丹沢自然史研究会 古林 賢恒 編 自由国民社
         『アウトドア危険・有毒生物安全マニュアル』 篠永 哲   学研

神奈川県森林インストラクター講座の泊まり込み研修に出かけた。自宅最寄駅近くで同じ講座を受けて
いる方に車で拾ってもらう。どんよりと空は曇っていた。なんかすっきりしない。車は丹沢のヤビツ峠方
面へ向かう。山の方へ上がっていくと、雲の上に出て、空が晴れてきた。途中菜の花台展望台に寄る。
すると、標高600mとは思えない光景が広がっていた。なんと雲海が広がっているではないか。遠くに富
士山も見えている。雲海なんて高い山に登らないと見れないと思っていたのでびっくりした。下界が曇っ
ていたおかげで珍しい光景を見ることができた。

                        
                雲海1                           雲海2

ヤビツ峠の駐車場で休憩。下から来るバスはすし詰め状態である。丹沢大山に登るのにヤビツ峠から
の方が楽に登れるからハイカーが多いそうである。

札掛の森に着く。一日目は、野生生物についての講義である。
マイクロバスに乗り込み、堂平へ向かう。講師自らの運転で途中かながわの美林50選に入っている、札
掛のモミ林、丹沢大洞のケヤキ林について説明をうける。戦中、モミは材にならないと言って切られてい
き、スギ、ヒノキの植林がされていった。当時の県の林政部が自然状態のモミ林を残すように軍に働き
かけた結果、現在でも残っているそうだ。当時軍に意見するということはかなり命がけだったはずであ
る。その働きかけのおかげで今でもクマタカが棲む森が守られている。
丹沢大洞のケヤキ林は人が植えたもので、幕府林だったものだそうだ。

林道の終点まで行き、そこから歩き始め、ブナ林の中に入る。堂平のブナ林もかながわの美林50選の
ひとつである。ブナ林の林床にはテンニンソウばかりが生えている。シカが食べない植物なので残って
いるそうである。また、オオバアサガラもシカが葉を食べない木なので、たくさん生えているそうだ。シカ
の食べない植物しか残っていないほどシカが集中しているということなのだ。
                       
3年ほど前に丹沢山に登った時、途中にバイケイソウだらけの場所があった。その時は花の時期は、さ
ぞきれいだろうなどと、のんきなことを考えたが、バイケイソウもシカの食べない植物なので、残ったとい
うことを後に知って、ショックだった。

ブナ林の所々に植生保護柵が設置され、潜在的な植生が調査されていた。植生保護柵の中のブナの
実生にナンバリングがされていて柵の外との比較がおこなわれている。フェンスの内側には落ち葉がた
まり生育を良くしていることも考えられるというが、フェンス内と外の林床は目に見えて違う。フェンス内
は青々としていた。
また、所々にネットが張ってあって、ブナやサワグルミの実を集め、発芽させ植林するボランティア活動
が行われているそうだ。同じ種でも場所によって変異があるので植栽は現地の種を使って行うというこ
とだ。

                            
             テンニンソウだらけの林床              植生保護柵

シカが増えたといっても、山奥に人間が追いやった結果である。シカはもともと平地の生物なのに人間
の開発に追われ今では山を棲みかとしているのだ。
昔は崩れやすい場所や植林に向かない場所には広葉樹が残されたというが、戦後の拡大造林では皆
伐したあとに造林が行われた。皆伐でかつて暗かった林床に光があたるようになり、シカの好む植物が
一時的に増えたこともシカの増加に拍車をかけたらしい。
その前にシカの天敵であるニホンオオカミを絶滅させてしまったことも大きな原因である。

野生生物が移動できるように点在する緑地を緑地で繋ぐという緑の回廊計画という考え方があるが、そ
の考え方の発祥の地は丹沢だそうだ。緑の回廊という考えは、シカを分散させることにもなるし、他の地
域のシカとの交配も可能になり、遺伝的多様性も保持できる。ある地域に孤立すると近親交配が繰り返
され、一時的に数は増えても結局は絶滅に向かうことになる。数年前NHKでツキノワグマの遺伝的多
様性が減少しているという番組を見たが、非常にショッキングだった。その番組の中でトキは捕獲し保
護された時点でもう遺伝的多様性がなくなっており、繁殖できない状態になっていたということが後に明
らかになったということを伝えていた。シカだけでなく他の野生生物にとっても他地域へ移動できること
は重要なのだ。

私たちにできることは、何だろうか?植林活動に参加してみる機会があれば、参加してみるもよし。天
敵の代わりにシカ肉の消費者になるもよし。ということで、シカ肉ってもんを一回食べてみたいもんだ。
野生生物はそんなにおいしいもんではないだろうが。実際にシカ肉の消費を促進させようと加工法を研
究しているところがどこかにあったような。

二日目は、午前中植物の講義を室内で受け、午後から沢沿いの植物を観察した。朝から小雨が降り、
じめじめして絶好のヒル日和。ヤマビルは蚊と同じように炭酸ガスに寄って来るそうだ。人一倍蚊を寄
せ付けるというわけではない私は、じゃあ大丈夫だと思った。講義が始まり沢沿いを歩き始めるとそこ
かしこで皆がさわいでいる。ヒルが登ってきたらしい。ヒルに吸血されても痛くないらしいし、おなかがい
っぱいになったら離れるらしいから、別にさわぐほどのことでもないだろうとたかをくくってみる。足場の
悪い場所でいろいろな植物の説明を聞く。

沢沿いの講義が終わって道に上がるとき、血を吸ってぷっくりと膨れたヤマビルが落ちていたので、口
を観察しようと思って、落ちていた葉でつかんでみる。するといきなり後ろの吸盤で吸い付かれてしまっ
た。不覚にも「ぎゃあ!」とヤマビルを投げてしまった。後ろにも吸盤あったのね。

講義と片付けが終わり最後に念のため靴をひっくり返して振った。すると長さ1.5cmくらいの小さなヤマ
ビルが一匹出てきた。う〜む。あなどれん。いつのまに。幸い吸血されなかった。ちょっとはどんな感じ
か試してみたいような気もしたけど。でも、自分から吸わせてみる勇気はないな。

<メモ>  ヤマビルに血を吸われても、痛くないようですが、ヒルは血を吸うときヒルジンという血を凝
       固させない物質を出すので、血が止まりにくくなります。血を吸われた部分から細菌が入っ
       たりすることもあるので、傷口を洗って止血しておきましょう。
       20%食塩水または木酢液原液に2、3日つけこんで乾かした布で足首、首などの衣服の開
       口部をふさぐと寄って来ないそうです。
       くっつかれたら防虫スプレーをかけたり、アルコールを近づけるとすぐに脱落するそうです。
       但し、アルコールは飲んでも効き目はありません。逆に炭酸ガスをたくさん発生して誘引し
       てしまうでしょう。

植物の講義だったはずがヒル話になってしまいました。

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